整骨院のカルテ、システムをやめた後も残りますか|施術録の保存とデータ持ち出し

予約システムをやめた後も、施術記録が院の手元にファイルとして残っている状態を表した図

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予約システムを検討するとき、「解約したらデータはどうなりますか」と聞く方は多いと思います。返ってくる答えは、たいてい「持ち出せます」です。ところが、この一言で確認を終えてしまうと、実際に解約する日になって初めて、思っていたものとは違うものを受け取ることになります。この記事では、「持ち出せます」と言われた後に何を聞けばいいのかを、渡す側のシステムを作って動かしている立場から、4つの質問に分けて書きます。

先にお断りしておくと、この記事は出すときの話だけを扱います。今のExcelや他システムから入れるときの手順は別の記事にします。保存期間の年数そのものにも踏み込みません。理由は次の章に書きます。

関連記事:整骨院の患者データをExcelから移す


「持ち出せます」という言葉は、指しているものが一つではありません

ここが厄介なところです。「データは持ち出せますか」への「はい」は、嘘ではありません。ただ、その「はい」が何を指しているかが、答える側によって変わります。

患者さんの一覧と予約履歴を表形式のファイルで書き出せることを指している場合もあります。管理画面から一件ずつ印刷できることを指している場合もあります。施術のときに撮った写真まで含めて、ファイルごとまとめて受け取れることを指している場合もあります。どれも、言葉としては「持ち出せます」です。

つまり、言葉が同じで中身が違うので、言葉では選べません。 確認すべきなのは「持ち出せるかどうか」ではなく、「持ち出したときに、手元に何が残るか」のほうです。


記録を残す期間と、システムを使う期間は、長さが違います

もうひとつ、先に押さえておきたい前提があります。

施術録(カルテ)には、保存期間の定めがあります。柔道整復では、療養費についての厚生労働省の通知に「施術録は、施術完結の日から五年間保管すること」と定められています(厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」平成9年4月17日 保険発第57号・その後改正/第六の3。2026年8月11日確認)。はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧でも、療養費の受領委任を取り扱う場合は、施術管理者が施術録を患者ごとに作成し、施術完了日から5年間保存することとされています。

ここで気をつけたいことが2つあります。ひとつは、この5年が「資格の法律」ではなく「療養費(保険を使う施術)の制度」の側で定められているという点です。ですので、自費のみで運営している場合の位置づけや、施術部位が複数あるときに「施術完結の日」をいつと見るかの判断は、一律には決まりません。自院に当てはまる条件は、所属されている団体や管轄の厚生局にご確認ください。 もうひとつは、5年というのは「作成から5年」ではないという点です。起算点は施術が終わった日なので、通い続けている患者さんの記録は、実際にはもっと長く抱えることになります。

そのうえで、この記事が見ているのはひとつだけです。その期間のあいだ、記録が手元で開ける状態にあるかどうか。

そして、ここで長さのずれが起きます。記録を残しておく期間は、施術が終わってから5年。一方で予約システムの契約は、月単位か年単位です。 合わなければ1年で乗り換えることもありますし、数年で別のものに移ることもあります。つまり多くの場合、記録の側がシステムより長生きします。契約が終わっても、記録を残す必要のほうは終わりません。

だから、順番としては「解約するときになったら考える」では遅いのです。契約する前に確認する項目になります。

そしてもうひとつ、大事な整理があります。保存の責任を負うのは、院です。 システムの側がそれを肩代わりすることはできません。システムにできるのは、院がその責任を果たせる形で記録を渡すところまでです。この記事の4つの質問は、すべて「果たせる形かどうか」を確かめるためのものです。

関連記事:予約システムを選ぶときの基準そのものは予約管理システムの選び方ガイドに7つ挙げました。この記事は、そのうち「乗り換えるとき・やめるとき」の中身を分解したものです。


まず聞く|「持ち出せます」の、何がですか

最初の質問はこれです。何が出てくるのか、名前で挙げてもらってください。

予約システムに入っている記録は、ふつう次のように分かれています。

  • 患者さんの基本情報(氏名・連絡先・生年月日など)
  • 予約の履歴(いつ・誰が・何を)
  • カルテの本文(症状、経過、施術内容などの文字情報)
  • 問診票
  • 施術のときに撮った写真や動画

「持ち出せます」と言われたときに実際に出てくるのが、この5つのうちどれなのか。ここを名前で確認しないと、後で欠けに気づきます。

気をつけたいのは、上の2つは出るのに、下の3つが出ないという形です。予約システムという名前からすると、予約と患者さんの一覧が出せれば役割を果たしているように見えます。ただ、記録として残す必要があるのは、下のほうです。

そして、どれか1つが欠けると、残ったものの価値も落ちます。 写真だけがごっそり無い状態で文字の記録だけ残っても、何を見て判断したのかが後から辿れません。


「全部出ます」と返ってきたら|表が出るのですか、中身も出るのですか

ここで安心してしまいがちですが、まだ半分です。出てくる形を聞いてください。

表形式のファイル(CSVなど)で出てくるものは、台帳の行です。1行が1件で、列に日付や名前や施術内容が入っています。文字で書かれた情報は、この形でほぼ問題なく持ち出せます。

問題は、写真と動画は行に入らないことです。

表の中に写真そのものを入れることはできません。ですのでそのセルに入るのは、「画像あり」という印か、画像が置いてある場所を指す文字列です。表としては完成していますが、画像そのものは、その表の中にはありません。

これは作りの問題です。文字の情報と画像のファイルは、システムの中でもともと別々に保管されています。書き出しの機能が、そのうち片方だけを対象にしていることがある、というだけの話です。表が出せること自体は本当なので、説明として間違ってはいません。ただ、受け取った側が期待していたものとは違います。

聞き方としては、こう聞くのが早いです。

「その書き出しに、写真のファイルそのものは含まれますか。それとも、写真は別ですか。」

表形式で書き出したデータには写真のファイルそのものが含まれず、画像は別の場所に残ることを表した図

「写真も含まれます」と返ってきたら|そのファイル、半年後も開けますか

まだ終わりではありません。含まれ方に、もう一段あります。

管理画面で写真を開いたとき、そこに表示されているのは、多くの場合その場かぎりの一時的なリンクです。第三者に画像のURLを知られても中身が見られないように、短い時間で切れるリンクをその都度発行する——これはセキュリティ上、正しい作りです。SyncotBaseも同じようにしています。

ただ、この仕組みには裏側があります。そのリンクは、アカウントが生きていることを前提にしています。 解約してアカウントが閉じられれば、リンクの発行元も無くなります。

ですので、書き出したファイルの中に「画像へのリンク」だけが並んでいる場合、受け取った直後は開けても、しばらく経つと開けなくなります。 解約した日に一度開いて確認して安心してしまうと、必要になったときに開けないことに気づく、という順番になりがちです。

その場で見られたことは、保存できていることの証明にはなりません。

確認のしかたは簡単です。拡張子を聞いてください。

「受け取るデータの中に、.jpg.mp4 のファイルそのものは入っていますか。」

入っていれば、そのファイルは自院のパソコンやハードディスクの中にあるものなので、相手のシステムが動いているかどうかとは関係なく開けます。入っていなければ、それはリンクです。

確かめ方は、読んで判断するより実際にやったほうが早く終わります。いま使っているシステムから一度書き出して、写真を1枚開いてみてください。開ければ問題ありません。開けなければ、それはリンクです。

乗り換え先についても、同じことを契約する前に見ておけます。SyncotBaseには最大2ヶ月の無料お試しがあるので、予約の使い勝手を試す前に、やめたときの受け取り方から確かめるという順番も取れます。


「ファイルごと入ります」と返ってきたら|誰が、どの操作で出しますか

中身が揃うことは分かりました。最後に残るのは、それを実際に受け取れるかです。ここは3つに分けて聞くと漏れません。

ひとつめ。解約を申し出た後も、しばらくログインできますか。 解約の連絡をした瞬間に画面に入れなくなる作りだと、「出しておこう」と思ったときにはもう手遅れです。手続きの後も、閲覧と持ち出しだけはできる期間があるかどうかを確認してください。

ふたつめ。自分の操作で出せますか、それともサポートへの依頼が必要ですか。 依頼制そのものが悪いわけではありません。ただ、依頼制ということは、やめると決めた相手に、こちらからお願いする形になるということです。対応にかかる日数と、費用がかかるかどうかは、契約する前に聞いておいたほうがいい項目です。

みっつめ。量が多いときはどうなりますか。 写真や動画を何年分も撮っていると、データの量はかなりのものになります。自動の書き出しには、サイズの上限が設けられていることがあります(SyncotBaseにもあります。あとで書きます)。上限を超えたときにどうなるのか——個別対応になるのか、分割して出すのか、追加の費用がかかるのか。ここは公表されていないことも多いので、直接聞くしかありません。

他社と並べた形で見たい方は、整骨院の予約システム比較で、料金・カルテ・データの持ち出しを一次情報どうしで並べています。


そのまま聞ける4行

まとめると、確認するのはこの4つです。相談や問い合わせのときに、そのまま使えるように並べておきます。

「持ち出せるのは、患者情報・予約履歴・カルテ・問診票・写真のうち、どれですか。」 「その書き出しに、写真のファイルそのものは含まれますか。」 「受け取るデータの中に、.jpg.mp4 のファイルそのものは入っていますか。」 「解約の手続きの後も自分で出せますか。量が多い場合はどうなりますか。」

4つとも答えが揃えば、やめるときの心配はほぼ無くなります。逆に、どこかで答えが詰まったら、そこがそのシステムを使い続けるあいだ抱えることになる論点です。契約してからでは動かせないので、先に聞いてください。


SyncotBaseの場合

私たちがどうしているかも書いておきます。SyncotBaseは、弊社(合同会社Rhythmwalker)が開発・運用保守している、整骨院・接骨院・鍼灸院向けの予約・カルテ管理システムです。都内で長年営業する整骨院と共同開発し、同院で実際に運用されています。

上の4つに沿って書きます。

何が出るか。 患者情報・予約履歴・カルテ・問診票・写真と動画を含む、全データです。全プランが対象で、下位プランのLightでも同じように出せます。ここに差をつけていないのは、記録を残す必要があるかどうかがプランで変わるものではないからです。

表か、中身か。 両方です。表形式のファイルに加えて、すべての項目を含むデータをまとめてお渡しします。

半年後も開けるか。 開けます。写真・動画・問診票は、リンクではなくファイルそのものをZIPに入れています。 受け取った時点で自院のものになるので、SyncotBaseが動いているかどうかとは無関係に開けます。あわせて、どのファイルがどの記録に対応するのかの一覧表も同梱しています。何百枚もの画像が並んだときに、どれが誰のものか分からなくなるのを防ぐためです。なお、患者さんの暗証番号などの認証に関わる情報は、伏せた状態で書き出しています。

誰がどの操作で出すか。 管理画面からご自身で取得できます。解約のお手続きの後も、閲覧と持ち出しだけができる状態になり、そのあいだも取得できます。編集や新しい登録はできなくなりますが、見ることと出すことは続けられます。また、記録が完全に削除される前であれば、解約そのものを取り消して再開することもできます。

そして、正直にお伝えしておく制約があります。 写真や動画の合計が 500MB を超える場合、自動での書き出しはできず、個別の対応になります。動画を多く撮っている院では届く量です。ここは今後の課題として認識しています。

私たちが写真をリンクではなくファイルとして同梱する作りにしたのは、施術録を5年保管する前提から逆算したからです。やめた後に開けないものを渡しても、渡したことにはならないと考えています。

ここまでの4つは、そのまま私たちに聞いていただいて構いません。写真をどれくらい撮っているかが分かれば、持ち出しの見込みも具体的にお答えできます。費用の内訳はLPに記載しています。

データの持ち出しについて相談する(SyncotBase公式サイト)


出したあとに、院ですること

データを受け取ったら終わり、ではありません。保存の責任を負うのは院なので、受け取った後にやることが3つあります。特別なことではありませんが、決めておかないと流れます。

置き場所を、1か所決める。 受け取ったZIPを、とりあえずパソコンのデスクトップに置いたまま、というのが一番危ない状態です。院のパソコンは数年で入れ替わりますし、壊れることもあります。保管する場所を決めて、同じものをもう1つ、別のところに置いてください。 外付けのハードディスクでも、クラウドの保管サービスでも構いません。1か所だけにしないことが大事です。

受け取った日に、1枚だけ開いてみる。 ZIPを展開して、中の写真を1枚、実際に開いてください。ここで開ければ、その形式は将来も開けます。開けなければ、まだ相手のサポートに聞ける段階です。半年後に気づくと、もう聞ける相手がいません。この確認に5分もかかりません。

誰が開けるかを決めておく。 保管した場所を院長だけが知っている状態は、記録が残っていないのとあまり変わりません。パスワードをかけた場合は、そのパスワードの置き場所も含めて、院として引き継げる形にしておいてください。

関連記事:紙の台帳から切り替えるときの順番は整骨院の予約管理を効率化するにまとめています。過去の紙の台帳を紙のまま残しておいてよい理由と、この記事の「デジタルの記録を手元に残す」話は、ちょうど裏表になります。


よくあるご質問

Q. 施術録(カルテ)は、何年保存する必要がありますか?

A. 柔道整復では、療養費についての厚生労働省の通知で「施術完結の日から五年間」と定められています(「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」第六の3)。はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧でも、受領委任を取り扱う場合は施術完了日から5年間とされています。ただしこれは療養費(保険を使う施術)の制度側の定めなので、自費のみで運営している場合の位置づけや起算点の判断は一律ではありません。自院の条件は所属団体や管轄の厚生局にご確認ください。 なお、起算点は「作成日」ではなく施術が終わった日です。

Q. 解約したら、カルテのデータはどうなりますか?

A. 解約のお手続きの後は、閲覧と持ち出しだけができる状態になり、そのあいだに全データをZIPでお持ち出しいただけます。全プランが対象で、Lightプランでも同じです。編集や新規の登録はできなくなりますが、見ることと出すことはできます。

Q. 持ち出したデータには、施術のときに撮った写真も入っていますか?

A. 入っています。リンクではなくファイルそのものをZIPに同梱しているので、受け取った後は、SyncotBaseとは関係なくご自身の環境で開けます。どのファイルがどの記録に対応するかの一覧表も一緒に入れています。※写真・動画の撮影・保存はStandardプランのカルテ機能です。Lightプランでは文字の記録が対象になります。

Q. 持ち出しは自分でできますか? サポートへの依頼が必要ですか?

A. 管理画面からご自身で取得できます。ただし、写真や動画の合計が500MBを超える場合は自動での書き出しができないため、個別の対応になります。量が多くなりそうな場合は、事前にご相談ください。

Q. 解約を決める前に、一度出して中身を見ておくことはできますか?

A. できます。解約のお手続きの前でも取得できますので、乗り換えを検討し始めた時点で一度出してみるのがおすすめです。中身を見てから判断できますし、受け取ったファイルが開けるかどうかも、その場で確かめられます。手続きの後も取得できますが、決めた日に一度出しておくほうが確実です。


まとめ

「データは持ち出せますか」への「はい」は、確認の終わりではなく始まりです。何が出るのか、表なのか中身なのか、半年後も開けるのか、誰がどう出すのか。 この4つまで聞いて、はじめて「持ち出せる」の意味が揃います。

そして、記録を残す責任は院にあります。システムにできるのは、その責任を果たせる形で渡すところまでです。契約する前に、渡され方を確認してください。やめるときの話ですが、決めるのは契約する前です。